ムカシノコト、ホリコムヨ。鹿児島の歴史とか。

おもに南九州の歴史を掘りこみます。薩摩と大隅と、たまに日向も。

本の紹介

『古事記』は、むかしからある岩波文庫版がいいと思う

日本国内の物事を深く理解するためのヒントが、『古事記』にはたくさん詰まっている。 例えば、神社へお詣りすると、そこには神様が祭られている。「どんな神様なんだろう?」と思う。また、神話が絡んだ史跡であったり、地名であったり、といったものにも出…

島津の猛攻、大友の動揺、豊薩合戦をルイス・フロイス『日本史』より

天正14年(1586年)から翌年にかけて、九州の情勢は大きく動く。島津氏は大友氏領内へ侵攻。大友氏の本拠地である豊後国(現在の大分県)の制圧を目指した。この争いに豊臣秀吉が介入。大友氏の救援要請を受けて、大軍を九州に送り込んでくる。 この一連の攻…

『図説 中世島津氏』(編著/新名一仁)、島津氏の中世史はずっと戦乱

これ、素晴らしい一冊だ! 帯には「戦後初の中世島津氏本格的通史!」の文字。そのとおりの内容となっている。「ずっとこんな本が欲しかった」と、個人的に思っていた。 『図説 中世島津氏 九州を席捲した名族のクロニクル』編著/新名一仁 発行/戎光祥出版…

『だんドーン』第1巻(作/泰三子)、川路利良の新たな魅力が描き出される

思ってもみなかったのである。まさか、川路利良(かわじとしよし)を主役にした漫画が出てくるなんて! 連載が始まったとき、驚いた。 そして、これが面白いのである! その作品は『だんドーン』という。作者は泰三子(やすみこ)氏。2023年6月に『週刊モー…

『戦国武将列伝11 九州編』(編/新名一仁)、九州の戦国時代の実像が見えてくる

九州の戦国時代というのは、一般的にはあまり知られていないと思う。九州に限らず、地域史のすべてに言えることでもあるけれど。 こんな本がある。九州の戦国時代を知るには、イイ本だと思う。 『戦国武将列伝11 九州編』編/新名一仁発行/戎光祥出版/2023…

『宝暦治水伝 波闘』(作/みなもと太郎)、木曽三川に挑んだ薩摩義士の物語

宝暦4年(1754年)から翌年にかけて、薩摩藩は木曽三川の治水工事に関わった。「宝暦治水」とも呼ばれている。 木曽三川とは木曽川(きそがわ)・長良川(ながらがわ)・揖斐川(いびがわ)のことである。美濃国・伊勢国・尾張国が国境を接するあたりで、3本…

Kindle Unlimitedで読む! 歴史関連のイイ本がけっこうあるぞ

「Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)」は月額定額制の電子書籍読み放題サービスである。Amazonが提供。このサービスでは200万冊以上を読むことができる。 対応端末はKindleやFireタブレットといったAmazonデバイス、スマートフォン・タブレット・P…

『大乱 関ヶ原』第1巻(作/宮下英樹)、のちの勝者が焦り、空回りする

面白い! すごく面白い! 『大乱 関ヶ原』は宮下英樹(みやしたひでき)氏が手がけるマンガ作品である。2022年より月刊誌『コミック乱』(発行/リイド社)で連載開始。2023年4月に第1巻が発売された。 大乱 関ヶ原 (1) (SPコミックス) 作者:宮下英樹 リイ…

島津氏の戦国時代を知る本、オススメをまとめてみた

島津氏の歴史は面白い! その中で、戦国時代が人気だ。島津忠良(しまづただよし)・島津貴久(たかひさ)・島津義久(よしひさ)・島津義弘(よしひろ)・島津歳久(としひさ)・島津家久(いえひさ)・島津忠恒(ただつね)・島津豊久(とよひさ)など人物…

『鹿児島県史料集』が便利! 鹿児島県立図書館のホームページで読める!

『鹿児島県史料集』なる鹿児島県立図書館のシリーズ刊行物がある。こちらで出ている本が、島津氏や南九州の歴史を調べるときにすごく重宝するのだ! 鹿児島県立図書館には貴重な史料・資料が大量に所蔵されている。『鹿児島県史料集』は、その所蔵本をおもな…

『旧記雑録』って本がすごい! 島津家に関する膨大な史料を編年で網羅

『旧記雑録』という編纂物がある。『薩藩旧記雑録』ともいう。島津家の歴史を知ることができる史料集だ。膨大な史料を年代順に書写・編集したものである。 まず、情報量がとんでもないのである。原本が失われてしまった史料も含まれている。そして、編年方式…

『関ヶ原 島津退き口 -義弘と家康―知られざる秘史-』(著/桐野作人)、撤退戦の壮絶さを生々しく描き出す

「島津の退き口(しまづののきぐち)」。慶長5年9月15日(1600年10月21日)の関ヶ原の戦いの一場面である。島津義弘(しまづよしひろ)の「戦場の鬼」っぷりを印象づけるエピソードのひとつだ。 島津義弘は敗軍の将となり、戦場の真っ只中に取り残された。手…

大友宗麟がキリスト教にのめり込む、そして高城川の戦い(耳川の戦い)で大敗、ルイス・フロイスの『日本史』より

天正6年(1578年)、日向国の高城川原(たかじょうがわら、宮崎県児湯郡木城町)で大友宗麟(おおともそうりん、大友義鎮、よししげ)と島津義久(しまづよしひさ)が激突した。結果は、島津勢が大勝する。大友勢は敗走し、追撃を受けて耳川(みみかわ、宮崎…

『明治維新と神代三陵 廃仏毀釈・薩摩藩・国家神道』(著/窪壮一朗)、神々の陵がどうして鹿児島県にあるのか?

日向三代(ひむかさんだい)の陵(みささぎ)はすべて鹿児島県にある、ということになっている。治定されたのは「可愛山陵(えのみささぎ、えのさんりょう)」「高屋山上陵(たかやのやまのえのみささぎ、たかやさんりょう、たかやさんじょうりょう)」「吾…

『破天の剣』(著/天野純希)、主役は島津家久! その軍才は強烈な光を放つ

戦国時代後期の九州は島津氏が席巻する。その過程で戦功を挙げまっくたのが島津家久(しまづいえひさ)である。島津四兄弟の末っ子だ。 四兄弟の中でもっとも知名度が高いのは、次男の島津義弘(よしひろ)だ。猛将としてよく知られている。かたや島津家久の…

『島津義久 九州全土を席巻した智将』(著/桐野作人)、長兄の目線で描く戦国島津氏の激闘

島津義久(しまづよしひさ)は島津氏の16代当主である。天文2年(1533年)の生まれで、慶長16年(1611年)に没する。その生涯は戦国時代後期から徳川幕府成立期にあたる。『島津義久 九州全土を席巻した智将』は歴史作家の桐野作人(きりのさくじん)氏によ…

『島津義弘の賭け』(著/山本博文)、そして島津家は戦国時代を生き残った

島津義弘(しまづよしひろ)を知るにはオススメの一冊だ! 『島津義弘の賭け』は、16世紀末から17世紀初めにかけての島津家の事情を丁寧に掘り起こす。豊臣政権下で苦闘し、関ケ原の戦いから生還し、粘り強く交渉して本領安堵を勝ち取る。お家存亡の危機の連…

ザビエルがやってきた、ルイス・フロイスの『日本史』より

1549年(天文18年)、イエズス会のフランシスコ・ザビエルが薩摩に上陸。キリスト教を日本に布教するための第一歩を踏み出した。ルイス・フロイスの『日本史』はこの出来事から始まるのである。 『完訳フロイス日本史』(訳/松田毅一・川崎桃太、全12巻)で…

宣教師が見た沖田畷の戦い(島原合戦)、ルイス・フロイスの『日本史』より

ルイス・フロイスの『日本史(Historia de Iapam)』を手に取ってみた。そこに綴られているのは、イエズス会宣教師が見た戦国時代だ。史料としては、かなり面白い存在なのである。 『完訳フロイス日本史』(訳/松田毅一・川崎桃太)という全12巻のシリーズ…

『風雲児たち』(作/みなもと太郎)、読みだしたら歴史の面白さに引きずり込まれる

江戸時代が面白い! 中世的な武士の世から近代国家に変わっていく過渡期である。その時代を生きた人が何を考え、どう行動したのか? そこのところを丁寧すぎるほど丁寧に描いているのが漫画『風雲児たち』(作/みなもと太郎)である。これ、すごい作品であ…

『「不屈の両殿」島津義久・義弘 関ヶ原後も生き抜いた才智と武勇』(著/新名一仁)、対立したけど仲が悪いわけではなさそう

戦国時代の島津氏は「強い」というイメージを持たれている。関ヶ原の戦いでの「島津の退き口」のほか、「木崎原の戦い」「耳川の戦い」「沖田畷の戦い」「泗川の戦い」などでの劇的な勝利がよく知られている。映画・ドラマ・小説・漫画なんかでも、このあた…

『三国名勝図会』(編/橋口兼古・五代秀堯・橋口兼柄・五代友古) 南九州の歴史を知りたければ、ひとまずこの書に訊ねるべし!

当ブログはおもに南九州の歴史をテーマにしているが、参考にすることが多いのが『三国名勝図会(さんごくめいしょうずえ)』である(実際の表記は『三國名勝圖會』)。鹿児島藩(薩摩藩)が編纂させた地理誌で、天保14年12月(1844年1月)に発行された。 明…

『関ヶ原 島津退き口 敵中突破三〇〇里』(著/桐野作人)、島津義弘の撤退戦の実像

関ヶ原から長い長い道のり 慶長5年9月15日(1600年10月21日)、美濃国関ヶ原(せきがはら、現在の岐阜県不破郡関ケ原町)で徳川家康が率いる「東軍」と、石田三成らを中心に結成された「西軍」がぶつかった。双方あわせて20万もの兵がひしめき合う大合戦とな…

『北条義時』(著/岩田慎平)、ひょんなことから最高権力者に

武家政権の始まりのゴタゴタを勝ち抜く 2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が楽しみなのである。主人公は北条義時(ほうじょうよしとき)だ。 鎌倉幕府というのは変則的な政権である。いちばん偉いのは「鎌倉殿(かまくらどの)」と称される将軍なのだが…

『中先代の乱』(著/鈴木由美)、北条時行が鎌倉を奪還する

カオスすぎる南北朝争乱への序章 南北朝争乱期というのは一筋縄ではいかない。いろんな要素が複雑怪奇に絡み合い、なにがなんだかわからないのである。ややこしいこともあってなのか、学校の教科書なんかでもさらっと流される感じである。歴史好きにとっても…

『島津貴久 -戦国大名島津氏の誕生-』(著/新名一仁)、薩摩の下剋上、その実態はややこしい

名著である! ……と思う。当ブログでは島津氏の歴史を扱っているが、記事作りの際にこの本を開くことが多い。そして、欲しい情報がちゃんと見つかるのである。『島津貴久 -戦国大名島津氏の誕生-』では、島津貴久(しまづたかひさ)の生涯を軸に16世紀の南九…