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『大乱 関ヶ原』第1巻(作/宮下英樹)、のちの勝者が焦り、空回りする

面白い! すごく面白い!

『大乱 関ヶ原』は宮下英樹(みやしたひでき)氏が手がけるマンガ作品である。2022年より月刊誌『コミック乱』(発行/リイド社)で連載開始。2023年4月に第1巻が発売された。

 

 

どんな内容かというと、第一話の冒頭でこう述べられている。

 

何故
関ヶ原の戦いが
起こったのか

その舞台裏を
描く次第
(『大乱 関ヶ原』第一話より)

 

 

 

 

唐入りの後始末から

物語は豊臣秀吉の薨去からはじまる。唐入り(朝鮮侵攻)の途上であったが、五大老・五奉行はその後始末に迫られるのである。とりあえずは豊臣秀吉の死を伏せて、日本軍を撤退させることになる。

主人公は徳川家康。五大老の筆頭である。唐入りの後始末に苦心する。一歩間違えば大乱に発展しかねないという危機感を抱きながら。

大老たちも、五奉行の面々も、同じ目的に向かって動く。しかし、それぞれの思惑が複雑に交錯し、だんだんと政治的な対立へとつながっていくのである。徳川家康もいろいろと動く。そこには焦りが見られ、ときには空回りもする感じ。その行動が他の者に疑いを持たれたりも……。

第1巻では、だいたいそんなところが描かれている。

 

 

『センゴク』の作者が重厚に描き出す

作者の宮下英樹氏の代表作は『センゴク』。仙谷秀久(せんごくひでひさ)の視点で戦国時代を描いたものだ。『センゴク』『センゴク 天正記』『センゴク 一統記』『センゴク権兵衛』と作品を続け、2022年に完結している。

『センゴク』シリーズからは、「すごく史料・資料を読み込んでいるなあ」という印象を受ける。そんな知見に加えて、作者の鋭い考察もふんだんに盛り込まれているのだ。だから、とてもとても骨太な作品に! そんな作風は、『大乱 関ヶ原』にもしっかりと受け継がれている。

歴史が動いていくときには、いろいろな要素が絡みあうものだ。『大乱 関ヶ原』では、どこに対立があるのか、それぞれの人物の立場や考え方はどうなのか、といったことが丁寧に解説されている。

その展開には説得力がある。

 

関ヶ原の決戦は慶長5年9月15日(1600年10月21日)のことである。豊臣秀吉の死から2年あまりのわずかな間に、状況は目まぐるしく動く。

この頃の徳川家康については、けっこう固定的なイメージがあるかもしれない。

絶対権力者がいなくなって、合議制で政権が運営されるようになり、徳川家康が権力の掌握に動き、これに対して石田三成らが挙兵、関ケ原の戦いに至る……と。

でも、このイメージのまんまかというと、そうとも言い切れないのである。関ヶ原の戦いへの過程は複雑怪奇だ。

 

冒頭には作者のこんな言葉も。

「天下簒奪の陰謀」「豊臣氏への忠孝」
当事者に左様な夢想に耽るような
余裕があるとは思えない
(『大乱 関ヶ原』第一話より)


そのとおりだと思う。先行きが見えず、当事者は目の前のことをどう対処するかで精一杯だったのではないだろうか。そんな中にあって徳川家康は、他の者たちよりもちょっとだけ先を見ようとしていたのかな? と感じたりも。 

 

 

島津家はどう絡んでいくのか?

第1巻で描かれた唐入りからの撤退で、島津義弘(しまづよしひろ)がけっこうな存在感を見せている。

関ヶ原の戦いの前後で、島津家と徳川家康との間ではいろいろある。島津家の内乱に徳川家康が介入したり、関ヶ原での「島津の退き口」があったり、戦後交渉で島津家が一歩も引かなかったりも……。

そこでは複雑な事情が絡みあう。どう描かれていくのか、楽しみである!

 

大乱 関ヶ原 (1) (SPコミックス)

 

島津義弘の朝鮮出兵や関ヶ原の戦いの頃の動きについては、こちらの記事にて。

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