ムカシノコト、ホリコムヨ。鹿児島の歴史とか。

おもに南九州の歴史を掘りこみます。薩摩と大隅と、たまに日向も。

島津氏の戦国時代を知る本、オススメをまとめてみた

島津氏の歴史は面白い! その中で、戦国時代が人気だ。島津忠良(しまづただよし)・島津貴久(たかひさ)・島津義久(よしひさ)・島津義弘(よしひろ)・島津歳久(としひさ)・島津家久(いえひさ)・島津忠恒(ただつね)・島津豊久(とよひさ)など人物もそれなりに知名度がある。

 

島津氏の戦国時代を知ることができる本をまとめた。記事作りでお世話になっているもの、個人的に人に薦めたくなるものを紹介してみる。

 


じつは、島津氏に関する史料はかなりある。『島津家文書』と呼ばれる膨大な文書類が残っている。これは島津家が代々受け継いできたもので、現在は東京大学史料編纂所が所蔵。国宝にも指定されている。また、島津久光(しまづひさみつ)の蔵書も大量に残っていて、こちらの多くを鹿児島大学が所蔵している(「玉里文庫」と呼ばれる)。

こういった膨大な史料をもとに、歴史研究が行われているのだ。そんなわけで、島津氏に関する本はけっこうな数が出版されている。

オススメは新名一仁(にいなかずひと)氏と桐野作人(きりのさくじん)氏の著書。このふたりが書いたものなら間違いないと思う。史料を丹念に読み込んで、鋭い考察が展開されているのだ。

 

島津氏の戦国時代を知る本

 

 

 

 

 

『島津貴久-戦国大名島津氏の誕生-』

著/新名一仁 発行/戎光祥出版/2017年

 

 

著者の新名一仁氏は、中世島津氏関連研究の第一人者ともいえる人物だ。そして、解説がとてもわかりやすい。

こちらの本では、15代当主の島津貴久の権力掌握から勢力拡大の過程を紐解く。島津貴久は分家の相州家(そうしゅうけ)の出身である。一族の家督争いを制して守護職につく。当主となってからも、まわりは敵だらけ。その生涯はずっと戦乱の中にあった。

中世の島津氏の歴史は一筋縄ではいかない。分家や一門衆も多く、権力の絡まりも理解しにくいのである。『島津貴久-戦国大名島津氏の誕生-』では、そんなややこしい背景も丁寧に説明してくれている。

 

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『「不屈の両殿」島津義久・義弘 関ヶ原後も生き抜いた才智と武勇』

著/新名一仁 発行/KADOKAWA/2021年

 

 

こちらも新名一仁氏の著書。島津義久・島津義弘の兄弟に焦点を当てている。豊臣秀吉に降ったあとから、朝鮮出征や庄内の乱を経て、関ケ原の戦いへ。そして、戦後の徳川家康との交渉まで。そのあたりを詳しく書く。

「両殿」というのは、当主がふたりいるような感じである。正確に兄の島津義久が太守、弟の島津義弘が名代である。で、豊臣政権は島津義弘のほうを厚遇し、島津義弘もそれに応えようとする。かといって、兄を立てようともしている。

島津義弘は島津家の代表のような立場だけど、領内での決定権を持っていない。一方の島津義久は豊臣政権の命令に対して腰が重い感じ。だから、グダグダな状況になりがちだった。

そんな島津家の内情がよくわかる。そして、関ケ原の戦いと兄弟それぞれの関わり方が見えてくる。

 

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『島津義弘の賭け』

著/山本博文 発行/中央公論新社/2001年(文庫版)

 

 

名著である。1997年に発刊。文庫版が2001年に出ている。ちょっと古い本だ。関ヶ原の戦いにおける島津義弘の動きを書き出す。その内面にまで迫る。

著者の山本博文(やまもとひろふみ)氏は、東京大学史料編纂所の教授を長年務めた人物である。ここに所蔵されている『島津家文書』に関する仕事も手掛けた。この膨大な史料群から情報を重ね合わせて、島津義弘の実像を見出そうとしている。

『島津義弘の賭け』はその後の島津氏関連の研究にも大きな影響を与えていると思われる。

 

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『関ヶ原 島津退き口 -義弘と家康―知られざる秘史-』

著/桐野作人 発行/ ワニブックス/2022年

 

 

関ヶ原の戦いで、島津義弘の部隊は前に向かって撤退する。「島津の退き口」と呼ばれるものである。島津義弘の動きや配下の者たちの動きが、生々しく描き出されている。撤退戦のルート、伊勢から大坂への決死行、大坂から九州への帰国、とその道程を解き明かす。

著者の桐野作人氏は歴史作家であり、島津氏関連の研究にも深く踏み込んでいる人物だ。史料を読み込んで真実に追り、かつ、場面場面がいきいきと描かれる。『旧記雑録』(詳細は後述)に収録された情報も多く引用されている。実際にその場にいた人物の覚書からのものだ。だから、すごく臨場感がある。

本書は2010年発刊の『関ヶ原 島津退き口 敵中突破三〇〇里』の増補改訂版である。「補論―家康と島津氏の意外に深い関係」という章も追加されている。

 

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『図説 中世島津氏 九州を席捲した名族のクロニクル』

編著/新名一仁 発行/戎光祥出版/2023年

 

 

通史である。中世島津氏の情報が詰まっている。鎌倉時代から関ヶ原の戦いまでの島津氏の動きがよくわかる。島津氏のことを知るなら、まずはこの本を手に取るといい感じ。

島津氏の歴史は南北朝争乱期も面白い! そのあとの15世紀もすごく混沌としている! このあたりのことがとても詳しく解説されている。

 

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『九州戦国城郭史: 大名・国衆たちの築城記』

著/岡寺良 発行/吉川弘文館 /2021年

 

 

九州の城に焦点を当てて、戦国時代の動きが丁寧に解説されている。高城川の戦い(耳川の戦い)、肥後侵攻、豊後攻めなど島津氏の戦いについても詳しい。

島津氏と関わりのある城で掲載されているものは、内城・清水城・東福寺城・志布志城・都於郡城・新納院高城・堅志田城・花之山城・岩屋城など。写真や縄張図が多いのもうれしい。

 

 

『戦国武将列伝11 九州編』

編/新名一仁 発行/戎光祥出版/2023年

 

 

九州の戦国武将の「列伝」。60人(36編)が取り上げられている。執筆者は九州各地の研究者8人。

島津氏関連の人物の紹介は多め。豊州家の島津忠朝(ただとも)や北郷時久(ほんごうときひさ)といった日向国にあった一族についても読むことができる。

 

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『現代語訳 上井覚兼日記 ―天正十年(一五八二)十一月~天正十一年(一五八三)十一月』

著/新名一仁 発行/ヒムカ出版/2020年

 

 


新名一仁氏による『上井覚兼日記』の現代語訳で、丁寧な解説と注釈がついている。

上井覚兼(うわいかくけん)は大隅国上井(うわい、鹿児島県霧島市国分上井)の生まれ。のちに日向国宮崎城を任され、島津義久の老中にもとり立てられた。その人物の日記が残っているのである。

『上井覚兼日記』は天正2年(1574年)8月~天正4年(1576年)9月、天正10年(1582年)11月~天正14年(1586年)10月の部分が残っている(一部欠損)。『島津家文書』内に自筆本27冊が現存し、国の重要文化財にも指定されている。

この日記からいろいろわかる。九州の情勢、島津家の動き、島津家の政治決定のあらまし、島津家中の人物たちの様子や人間関係などが見える。また、当時の城主の暮らしぶり、習慣や風俗などについても知ることができる。

こちらの本では天正10年(1582)年11月~天正11年(1583)年11月の部分が訳されている。島津氏が肥後に進出したあたりの状況が書かれている。

 

 

『現代語訳 上井覚兼日記2 天正十二年(一五八四)正月~天正十二年(一五八四)十二月』

著/新名一仁 発行/ヒムカ出版/2021年

 

 

新名一仁氏による『上井覚兼日記』の現代語訳の第2弾。

天正12年(1584年)の日記を収録。この年の3月24日(旧暦)に肥前国島原(長崎県島原市)で島津氏と龍造寺氏がぶつかる。「沖田畷の戦い」である。この前後の動きがとてもよくわかるのだ。

島津家久を大将として渡海する。島津義久や島津義弘も肥後国の佐敷(さしき、熊本県葦北郡芦北町)に後詰めとして入っていた。上井覚兼もここに詰めた。戦後に佐敷で龍造寺隆信の首実験をした様子も記される。

 

 

『現代語訳 上井覚兼日記3 天正十三年(一五八五)正月~天正十三年(一五八五)十二月』

編/新名一仁 発行/ヒムカ出版/2023年

 

 

新名一仁氏による『上井覚兼日記』の現代語訳の第3弾。天正13年(1585年)の日記を収録。龍造寺氏は島津氏の傘下となる。一方で、大友氏とは関係が悪化し、対決姿勢が再燃してくる。

 

 

 

『さつま人国誌 戦国・近世編』

著/桐野作人 発行/南日本新聞社/2011年

 

 

南日本新聞に掲載されたコラムを加筆修正して編集したものである。戦国時代の島津家とその周囲に関して綴られる。もとが新聞のコラムということもあり、すごくわかりやすい。

載っているネタが、個人的にはグッとくるのである。例えば、島津家久とか、薩州家とか、川田義朗とか、山田有信とか、くじ引きのこととか、近衛信尹の薩摩配流とか、宇喜多秀家の薩摩落ちとか、明石全登の息子の薩摩潜伏とか……。

 

 

『さつま人国誌 戦国・近世編2』

著/桐野作人 発行/南日本新聞社/2013年

 

 

桐野作人氏の南日本新聞掲載コラムからの本。2冊目。こちらも面白いエピソードが詰まっている。樺山玄佐(樺山善久)とか、川上忠堅とか、「立花宗茂と島津義弘」とか、島津家久と蹴鞠とか、伊集院幸侃(伊集院忠棟)の上意討ちとか……。

 

 

『さつま人国誌 戦国・近世編3』

著/桐野作人 発行/南日本新聞社/2017年

 

 

桐野作人氏の南日本新聞掲載コラムからの本。3冊目。

大隅国での戦い、肥後国や豊後国での戦い、豊臣軍との戦いなどについて知ることができる。島津歳久や島津豊久についても書かれている。

 

 

 

『完訳フロイス日本史〈6〉ザビエル来日と初期の布教活動―大友宗麟篇(1)』

著/ルイス フロイス 訳/松田毅一・川崎桃太 発行/中央公論新社/2000年

 

 

イエズス会宣教師のルイス・フロイスの『日本史』を翻訳したもの。外国人が見た戦国時代の日本の様子はなかなかに興味深いのである。

この巻では、フランシスコ・ザビエルの来日からが記される。薩摩国に入って島津貴久に謁見。福昌寺の僧の忍室との交流や、市来城での布教などについても書かれている。そして、アンジロー(ヤジロー)がとても優秀だ。

 

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『完訳フロイス日本史〈7〉宗麟の改宗と島津侵攻―大友宗麟篇(2)』

著/ルイス フロイス 訳/松田毅一・川崎桃太 発行/中央公論新社/2000年

 

 

ルイス・フロイス『日本史』の翻訳。この巻では、高城川の戦い(耳川の戦い)が描かれる。当時、ルイス・フロイスは豊後国にいて、大友家の様子が詳しく書かれている。大友義鎮(大友宗麟)がキリスト教にはまっていく過程もよくわかる。

 

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『完訳フロイス日本史〈8〉 宗麟の死と嫡子吉統の背教―大友宗麟編(3)』

著/ルイス フロイス 訳/松田毅一・川崎桃太 発行/中央公論社 2000年

 

 

天正14年(1586年)に島津氏は豊後侵攻を開始する。大友氏の拠点である豊後の制圧を目指した。豊後国は大友義鎮(大友宗麟)の支援のもとで、長年にわたって宣教師たちが活動していた。大友氏領内の混乱、島津氏の軍勢に蹂躙される豊後の様子などが伝えられている。

 

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『完訳フロイス日本史〈10〉大村・竜造寺の戦いと有馬晴信の改宗―大村純忠・有馬晴信篇(2)』

著/ルイス フロイス 訳/松田毅一・川崎桃太 発行/中央公論新社/2000年

 

 

ルイス・フロイス『日本史』の翻訳。この巻では、沖田畷の戦いについて書かれている。龍造寺隆信はキリスト教徒を迫害する暴君である、とする、龍造寺軍は万全の態勢で島原へ進軍するが、島津氏が有馬氏の援軍として出したナカツカサ(島津家久)が撃ち負かしてしまうのである。

 

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『島津義久 九州全土を席巻した智将』

著/桐野作人 発行/PHP研究所/2005年

 

 

島津義久の目線で描く。小説なのだが、すごく史実の検証がしっかりとしている感じがする。史料をものすごく読み込んで書かれているのだ。島津義久の人物像も魅力的に書かれている。

 

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『風雲児たち』

作/みなもと太郎 発行/リイド社(ワイド版)

 

 

ギャグを織り交ぜた歴史書だ! と個人的には思っている。素晴らしいマンガ作品である。

もともとは幕末を描くためにスタートした作品とのこと。薩摩藩や長州藩が倒幕を主導するが、その根っこには関ヶ原の戦いがある、と。そんなわけで、関ケ原の戦いから始まる。1979年に連載開始。未完である。

冒頭の関ヶ原の戦いでは「島津の退き口」から島津家と徳川家の交渉について描かれている。歴史の考証はかなりしっかりと、かつ、面白おかしく展開される。

 

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『センゴク権兵衛』

作/宮下英樹 発行/講談社

 

 

仙石秀久(せんごくひでひさ)を主人公にしたマンガ作品。2015年より連載開始、2022年完結。

この作品は島津家久(しまづいえひさ)が魅力的に描かれている。仙石秀久は織田信長・豊臣秀吉に仕え、戦功を挙げて大名に出世する。しかし、戸次川の戦いで大敗し、戦場から逃走。大失態をとがめられて、すべてを失うことになる。島津家久は戸次川の戦いにおける島津方の大将だ。仙石秀久にとって、強大な敵として登場するのである。

高城川の戦い(耳川の戦い)や戸次川の戦いが、詳細に描かれている。臨場感のある作画も魅力的だ。

 

 

 

『大乱 関ヶ原』

作/宮下英樹 発行/リイド社

 

 

2022年連載開始。関ヶ原の戦いへとつながっていく、徳川家康の政治的な駆け引きを中心に描く。朝鮮からの撤退戦など、序盤から島津家がけっこうな存在感を見せている。このあとも物語にかなり絡んできそうな雰囲気だ。

 

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鹿児島県史料『旧記雑録』『旧記雑録拾遺』

鹿児島県により翻刻され、「鹿児島県史料」というシリーズで発刊されている。

『旧記雑録』は19世紀に伊地知季安(いじちすえよし、すえやす)・伊地知季通(すえみち)父子が編纂。島津家に関わる膨大な史料は年次で編集したものである。ものすごい情報量で、編年にしていることで調べやすい。

『旧記雑録拾遺』は鹿児島県歴史資料センター黎明館が編纂し、『旧記雑録』に収録されていない情報を補完するような感じだ。島津氏の一門の史料をまとめた『諸氏系譜』、有力氏族の『家わけ』、地域ごとに情報をまとめた『地誌備考』などが便利。

『旧記雑録』『旧記雑録拾遺』は鹿児島県のホームページで閲覧可能。pdfが公開されている。

www.pref.kagoshima.jp

 

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『三国名勝図会』

薩摩藩の地理誌で、天保14年12月(1844年1月)に完成。編纂者は橋口兼古・五代秀堯・橋口兼柄・五代友古。島津家領内(薩摩国と大隅国、日向国の一部)の山水・神社・寺院・城跡・史跡などの情報が詰まっている。ひとつひとつの由緒がしっかりと書かれている。絵図のデキも素晴らしい。

ちなみに編者のひとりの五代秀堯の次男が、五代友厚(ごだいともあつ)である。

 

全60巻が、国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できる。「三国名勝図会」で検索をかけるべし。

dl.ndl.go.jp

 

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『本藩人物誌』

戦国時代の島津氏に関連した人物を網羅。略伝が「いろは」順に掲載されている。編纂者は福崎正澄とされる。

島津久光の手による写本があり、翻刻はこちらがベースになっている。鹿児島県立図書館が「鹿児島県史料集」の第13集として発刊している。

鹿児島県立図書館のホームページにてpdfが公開。「鹿児島県史料集」には、ほかにもいい史料が多い。『島津世家』『島津世禄記』『明赫記』『樺山玄佐自記』『樺山紹剣自記』などいろいろ。

www.library.pref.kagoshima.jp

 

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『鹿児島県の中世城館跡』

発行/鹿児島県教育委員会/1987年


鹿児島県教育委員会の調査報告書である。鹿児島県の城跡に関するデータが網羅されている。

「全国遺跡報告総覧」というホームページでpdfを入手できる。キーワード検索から探すべし。ちなみにこちらのサイトは、全国の埋蔵文化財の発掘調査報告書が登録されている。城跡の報告書も探すといろいろ見つかるぞ。

sitereports.nabunken.go.jp

 

 

 

『中務大輔家久公御上京日記』

天正3年(1575年)、島津家久が上洛している。そのときに書き残した日記である。薩摩から京へ、そして帰国するまでの日々がつづられる。京では馬上で居眠りする織田信長を見たり、明智光秀に招かれて近江の坂本城に行ったりもしている。

東京大学史料編纂所には原本と思われるものが所蔵されている。これを翻刻したものが東京大学史料編纂所ホームページで公開されている。以下ページの「史料紹介」より。

東京大学史料編纂所研究紀要第16号(2006)/東京大学史料編纂所ホームページ

 

また、『旧記雑録 後編一』にも、「家久君上京日記」として掲載されている。