祁答院(けどういん)の大村(おおむら)に馬頃尾(まころべ)というところがある。山あいに田んぼが広がる、いい感じの田舎の風景である。この地を見守るタノカンサァ(田の神)を二つ紹介する。
タノカンサァ(田の神)は農業の神であり、子孫繁栄の神であり、地域の守り神である。島津氏領内(鹿児島県全域と宮崎県の一部)で18世紀頃から盛んにつくられたようで、あちこちで出くわすのだ。
タノカンサァ(田の神)の詳細は、こちらの記事にて。
鹿児島県道51号沿いの馬頃尾のあたりに、特産品販売所がある。その脇の道を入ってしばらく行くと、道沿いの田んぼ脇にこんな岩がある。
ぐるりと向こう側に回り込むと、タノカンサァ(田の神)がいた。田のほうを見ている。
きれいに彩色されて表情豊かだ。でも、実際には風化がけっこう進んでいる。この地域のタノカンサァ(田の神)は彩色されているものが多い。風化で不明瞭になっているところは、描いて補っているという感じだ。そのことがまた、面白い味わいにつながっているようにも思う。
制作年代は不明。なかなか古いもののようではある。18世紀か19世紀のものだろうか。
来た道をそのまま奥へ。ゴルフ場のあるほうへと進んでいくと、タノカンサァがもう一つ。こちらはちょっとリアルな表現である。
右手にはメシゲ(しゃもじ)を持つ。左手のほうは欠けていて、よくわからず。丸い頭は僧を思わせる。こちらも江戸時代のものだと思われる。
祁答院はけっこうタノカンサァの多いところ。風景の中に溶け込んでいる。
<参考資料>
『薩摩のタノカンサア』
著/寺師三千夫 発行/鹿児島放送文化研究会 1967年
ほか