ムカシノコト、ホリコムヨ。鹿児島の歴史とか。

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高牧の田の神、ペロっと舌を出す/鹿児島県姶良市蒲生町久末

のどかな山間の集落である。鹿児島県姶良市の蒲生(かもう)に「高牧(たかまき)」というところがある。そこに面白い雰囲気のタノカサァ(田の神)がいた。「高牧の田の神」と呼ばれている。「ベロ出し田の神さぁ」とも呼ばれる。

 

タノカンサァ(田の神)は鹿児島県のあちこちにある神像である。現存する田の神像の制作年代から推測すると、18世紀以降に島津氏領内で盛んに造られるようになったと思われる。田の守り神、子孫繁栄の神、地域の守り神といった性格ののもので、集落ごとに大事にされている。

タノカンサァ(田の神)の詳細については、こちらの記事にまとめている。

rekishikomugae.net

 

 

 

山間の道を行くと墓地がある。その入口の上のほうに祠が置かれている。その中にタノカンサァ(田の神)は納められている。祠は石とレンガを積んで造られているみたい。たぶん、そこまで古いものではない感じ。

 

祠の中の田の神像

雨と風はしのげるね

 

中をのぞき込むと、きれいに化粧がされたタノカンサァ(田の神)がいる。手を交差させている仕草が面白い。右手にはメシゲ(しゃもじ)を持つ。左手に持っているのはスリコギだろうか。頭にはシキ(米を蒸す道具)をかぶる。

 

田の神像

赤いメシゲが目立つ

 

田の神像

腰掛けているような姿勢

 

制作年代は不明。明治33年(1900年)に持ち出されたが、大正8年(1918年)に高牧に戻ってきたとのこと。情報はタノカンサァの横にあった看板から。どういう経緯で持ち出されてまた戻されたのか、気になるところでもある。

 


表情はニコニコと。口元をよく見ると、ペロリと舌を出している。ユーモラスな雰囲気だ。

 

田の神像の顔

口元に注目

 

「舌を出している」というのには、いかなる意味があるのだろうか? いろいろ想像させられる。もしかしたら、年貢を取り立てる権力者への反骨心の現れ……とか?