「『信長の野望』でいちばん面白かったのは、どれ?」と聞かれたら、私はこれを挙げる。ニンテンドーDSでコーエー(現在はコーエーテクモゲームス)から発売された、ちょっと昔のゲームだ。
『国盗り頭脳バトル 信長の野望』
ニンテンドーDS/コーエー/2008年6月26日発売
『信長の野望』は人気のあるゲームだ。『信長の野望』に触れて、戦国時代に興味を持った人もけっこういるんじゃないかと思う。
『信長の野望』の1作目は1983年発売。そこからシリーズ化し、新作が出るたびに新しい要素が追加されていく。領国経営においても、合戦においても、外交においても、できることがどんどん増えていった。内容が濃くなることでゲームは面白くもなるのだが、その一方で「こりゃタイヘンだな」とも感じる。そして、すごく時間がかかるのである。
シリーズ作品には多人数対戦ができるものもある。その昔、ファミリーコンピュータ版の『信長の野望 全国版』や『信長の野望 武将風雲録』で8人対戦をしたことがある。これがまた、とんでもなく時間がかかった。これ、対戦を途中でやめてしまうことが、ほとんどだったのではないだろうか。
で、『国盗り頭脳バトル 信長の野望』はどんなゲームなのかというと、『信長の野望』シリーズのエッセンスを徹底的に簡略化。5分~30分くらいで決着がつくのである。
駆け引きが面白い!
一見するとボードゲーム風。マップ上のマスに武将のコマを動かして、勢力範囲を広げていく。マスごとに石高が設定されていて、城や金山なんかのマスもある。
政治に関しては大幅にカットされているが、城や武将の強化、同盟といったことができるようになっている。
武将は、戦力(率いている兵)や兵科、特技や切り札、といったもので個性付けがなされている。また、コストにあたる「知行」が設定されていて、強い武将はこれが高くなっている。
一例として、羽柴秀吉は知行5で戦力5、兵科は足軽、特技「一夜城」と切り札「刀狩り」を持つ。
兵科は「騎馬」「足軽」「鉄砲」の3種。騎馬隊は足軽隊に強い、足軽隊は鉄砲隊に強い、鉄砲隊は騎馬隊に強い、という三すくみの関係となっている。
特技はランダムで発生(発生率も設定されている)。また、切り札の使いどころも重要。これらも局面を大きく変える要素となっている。
軍の編成では知行の制限があり、強い武将だけ揃えるということはできない。穴埋め的に知行1や知行2の武将を入れたりも。
ちなみに知行1の武将では、私は今川氏真をいつも入れていた。戦力1の足軽隊で、特技なし。ただ、お金を一気に増やせる「七福神」という切り札を持っていて、これがなかなか強い。
武将については大名家に最初からいる者のほか、シナリオをクリアーすることでもらえたり、プレイにより得たポイントを使って獲得(いわゆるガチャみたいなもの)したりして、増やしていく。
このゲームの特徴の一つが、ターンごとに全プレーヤーが行動を指示し終えてから、特定のルールに沿って盤面が動き出すこと。その際には、戦力(兵力)の小さいマス・コマから先に行動する。このルールがとても絶妙なのだ。
大きな戦力で一気に敵を踏みつぶそうとしたところ、寡勢にちまちま攻められ、兵科の相性とか、特技や切り札なんかも絡んできて、攻めきれないことも。ときには思わぬ損害を出してしまうこともあったりする。また、先に行動されるので、逃げられてしまったりも。
相手がどうコマ(武将)を動かすのかを読んで、自軍の動かし方を考える必要があるのだ。この要素が、ゲームをすごく奥深くしているように思う。
対戦が面白い!
対戦モードは4人まで参加可能。選べる大名は「織田」「武田」「上杉」「北条」「伊達」「毛利」「長宗我部」「島津」の8つから。限られた知行(コスト)の中で、各大名専用の武将を軸にしながら軍を編成する感じだ。
対戦はソフト1本でも可能。他プレイヤーのゲーム機本体にゲームをシェアして遊べる機能に対応していた。もちろん、それぞれにソフトを持ち寄っても遊べる。
また、ニンテンドーDSには「ニンテードーWi-Fiコネクション」というインターネット通信サービスがあった(現在はサービス終了)。『国盗り頭脳バトル 信長の野望』もこちらに対応。全国のプレイヤーとマッチングして、オンライン対戦が楽しめるようになっていた。
このゲームの対戦はすごく面白い。練り込まれたルールが素晴らしく、テンポよく展開し、瞬時の判断を要する読み合いもアツいのだ。
なお、対戦のことばかり書いているが、一人で遊び込んでも、相手がコンピューターでもしっかりと面白い。そのことも付け加えておきたいな、と。
軽快な操作感
ニンテンドーDSというゲーム機は、タッチペンで操作ができることも大きな特徴であった。『国盗り頭脳バトル 信長の野望』は、ゲーム機のこの特性をしっかりと活かしている。
基本的にはタッチペン操作だけで、すべてのことができる。コマ(武将)を動かす操作とも、とても相性がいい。
軽快に操作できるから、ゲーム展開もサクサクと進む。操作性の良さもゲームの面白さにしっかりつながっているようにも思う。
いわゆる「隠れた名作」
数字についてはちょっとわからないが、あまり売れたゲームではないと思われる。「遊んだことあるよ」って人は、多くないのではないだろうか。前述のオンライン対戦でも、相手探しに苦労した記憶がある。
当時、ニンテンドーDSでは「脳トレ系」みたいなゲームが大量に発売された。タイトルにある「国盗り頭脳バトル」も、そんなことが影響していたのかも。当時、脳トレ系=誰でも遊べるカジュアルなゲーム、というイメージも持たれていた。
『信長の野望』はカジュアルとは対極にあるような気も……バリバリ硬派なイメージなんじゃないか、と。「カジュアルに遊べる『信長の野望』」という狙いは、当時、あまり世間に響かなかったのかな?
結果的に「隠れた名作」とか、「知る人ぞ知る」みたいな作品となってしまった感じだ。
このゲーム、スマホ向きでは?
今回、記事を書いていて感じたのだけど、このゲームはスマートフォンとすごく相性が良さそうだ。
戦略性と運の要素が絶妙に絡み合った完成度の高いルール、サクサク遊べる通信対戦、武将を集める楽しみなど、いまあるスマホゲームでよく見る要素もたくさんある。
操作感覚についても、タッチペンと指の違いはあるものの、かなり近い感覚だと思う。
基本はそのままに、ちょっとアレンジするだけで、面白いスマホ向けゲームになりそうなのだが……。